「そういう意味で言ったんじゃない」?

松井智子『子どものうそ、大人の皮肉



冗談や皮肉、嘘。そういうものでなくても、裏の意味を読み取らなければならない場面のなんと多いことだろうか!
それら、言葉の裏側で行われるコミュニケーションの仕組みについて説かれているのが、この『子どものうそ、大人の皮肉』だ。

別に正確なコミュニケーションのための手引きというわけではない。むしろ「そんなものは誰にだってできない」という結論を導き出すものだ。皆できないことなのだから、完璧に出来ないことを気に病む必要はないのだと説かれる。

「コミュニケーションがまともに取れない、自分は社会不適合だ!」という思考の泥沼に陥っている人にとっては、ちょっとした光明となるのではないだろうか?
ただし、そこには「コミュニケーションの基本は身についているはずだから」という前提がある。その基本が覚束ないと感じていると、結局は途方に暮れるかもしれない。私がその一人だが。

ともあれ、納得感を得られる部分は多かった。
たとえば親しい相手に対するとき、人は自分中心になりがちなのだということ。視点を共有しているような錯覚に陥り、結果すれ違いが生じる。ああ、そうやって別れるカップルいそう……、などと(自分のことはさておき)思ったり。
また、第五章ではアスペルガー症候群の事例も扱われている。特に「対面より電話が楽」
という意見に共感を覚えた。私も同じように感じていたのだけれど、「なんで?」と言われるとうまく説明ができなかった。その感覚を代わりに解説してもらったようで少しスッキリした。

何かが解決するわけではなくとも、少なからず、きっと得るものがあったと思う。

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