震災後の現実を考える

垣谷美雨『女たちの避難所



震災が起きる。津波が襲う。そして始まる避難所での生活。舞台は架空の町となっているが、これは紛れもなく3.11とその後の物語だ。

こういう本を手に取った時、どんなふうに物語と相対すれば良いのかと迷う。本当にあったことと思うか、フィクションとして扱うか。その匙加減がわからなくなる。
実話に基づいている一方で、「これが避難所の真実だった」と認識するのも、それはそれで危ないように思える。

この本で特に気になるのは、悪役ポジションにある男性たちが終始悪役に徹しているということ。その一方で、「亡くなった夫」は「良い人だった」と語られる。「今周りにいる男性たち」と「ここにいない男性たち」のギャップが激しくて、物語のために配された人物でしかないのでは、と思えてくる。主人公らの周りの人々が「良いところもある人たち」だったら、最後の潔い選択には繋がらなかっただろうから。

語り手である3人の女性の主観が入っている、というのももちろんあるのだろう。亡くなった人の記憶はきっと美化されているだろうし。
しかし彼女らの視界の外にあるものについて思いを馳せると、何ともモヤッとした気持ちになる。

「震災後の現実を知れる本」というより、「その足掛かりを見つける本」として読めば良いのかもしれない。


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