救済と、おいしいごはんのお話。

原田マハ『まぐだら屋のマリア

舞台となるのは、おとぎばなしのような崖っぷちのお店。


タイトルと表紙に騙されたが、宗教の話ではない。登場人物の名前がキリスト教由来だったりするけれど、それは物語を暗示する以上の役割を果たすものではない。まずはその点を含み置いた上で読み始めたいところ。
ちなみに私はどこかでその繋がりが語られるものと思ったまま読み進め、見事に肩透かしを食らったのだった。

さて、本編はと言えば、テーマだけで言えばその名の通り、救済の物語だ。
罪を犯した人々が田舎の定食屋「まぐだら屋」に辿り着き、そこで立ち直り、前を向いて歩き始める。……などと書くと、「なんだ、ありふれた感動ものか」と思いそうなところだ。しかし、どことなく寓話的な雰囲気が醸し出され、そうやって救いが描かれることをすんなりと受け入れられた。名前の効果なのかもしれない。
「尽果」なんて名前の土地で、死にたい人がふらっと降り立ってしまうという設定も大きい。たまたま今回の主人公にスポットが当たっただけで、この土地ではきっとこういうことが繰り返されてきたのだろう…と思わせられる。

それと、書かずにはいられないのが、食べ物の描写がすごく丁寧だということ。それも料理をする過程が。食べるシーンが直接的に描かれなくても、「これは…おいしい!」と確信させるものがある。その点だけを目当てにしても、手に取ってみる価値があると思う。

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