気持ち悪さが突き抜けてる。

羽田圭介『御不浄バトル』(集英社文庫)





ひとことで言うと気持ち悪い!これに尽きる。

悪徳業者に勤める主人公がひたすら保身のために奔走する。告発しようとして証拠集めに精を出すのは会社都合退職を勝ち取るため。悪事に加担してしまうのは会社で無事に過ごすため。矛盾した行動もぼんやりと正当化され、そこに正義だったり誰かのためだったりという目的は存在しない。嫌悪感を催さずにはいられない。が、同時に同じ立場ならそういう思考になりそう…という危うさも感じられる。だからこそ不気味で、気持ち悪い。

何が正常なのか分からなくなっていく様は、汚さに対する感覚のゆがみとなって現れる。序盤から兆候はあった、トイレでの奇行がエスカレートしていくのだ。
この執拗に繰り返されるトイレの描写がなければ、こんなにも気持ち悪さを感じることはなかっただろう。それはもう某幼年誌ばりの勢いで、しつこく登場するのである。トイレと、それにまつわるあれやこれやが。

このトイレの描写、読後の気持ち悪さを印象付けているという意味では成功しているのだろう。が、生理的にちょっと受け容れ難い。なので、あまり人に勧めたくない1冊だったりする。
「どんと来い!」という方には、食事中に読まないようにという忠告を添えて紹介したい。

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