社畜度を測るモノサシ。

日野瑛太郎『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。

前が見えなくなってない?


この本を読んで「当たり前のことを言っているだけ」と思うか、それとも「えっ、そんなこと言って良いの!?」と思うか。感想によって社畜度が推し量られそうだ。
自分はどうなのかと言えば、半々くらいかと思う。「変だ」と思いつつも、会社で生きていくためにその価値観に染まろうとしてきたところがある。結局染まりきれずに脱落したわけだが。

例えば以下の部分。

残業代を払わないというのは、一言で言えば泥棒と一緒です。…(略)…サービス残業を強要するということは、会社が社員に対して窃盗を働いていることと変わりありません。(p.26)

ここについてはまあ、同意できる。しかし、こちらはどうだろうか?

法律を守ることで会社が潰れてしまうというのであれば、それはもう潰れるしかないのです。(p.26) 

それは行き過ぎなのでは……と思わなくもない。一企業が潰れるというのは大変なことだし、会社のサービスが停止することで社会的な損害もあるだろう。であれば、会社の存続のためにある程度の犠牲はやむを得ないのではないのか?

しかし、その思考も以下のように諭される。

「経営者目線」で考えると、従業員にとって都合の悪いことも、いとも簡単に正当化されてしまいます。…(略)…一介の雇われでしかない従業員に、経営者目線を要求するというのは結局そういうことです。(pp.83-84)

「会社の存続のため」などというのは、まさにこの「経営者目線」における考えだろう。一介の従業員がそこに配慮し過ぎることで、「社員に対する窃盗」が看過されてしまう。
このあたりなどは目からウロコだった。
経営者目線を持てない奴は半人前だ! という言を鵜呑みにして働いてきたが、確かに一従業員がそのレベルの「一人前」でなくてはいけない道理はないのだった。
もちろん「会社として」という目線自体は仕事の上で必要になることもある。が、だからと言って自分の利害に関することまで「経営者目線」で見るというのはおかしなことだ。「従業員目線」も置き去りにしてはいけない。

と、まあこのように、様々な社畜的価値観に対して、「それは違うんじゃない?」という疑問が呈される。少々身構えている人にも受け入れられやすい、柔らかな語り口もポイントだ。

タイトルで拒否反応が出ちゃう人、「社畜じゃない、ただ仕事が好きなだけだ!」と思っている人にこそ読んで欲しい。まあ、本当に現状で幸せって人には必要ないのかもしれないが。



出版年は2014年。作者の日野瑛太郎氏は現在(2017年7月時点)も『脱社畜ブログ』を更新している。より現状に即した話を求めるのなら、そちらを参照してみるのが良いかもしれない。

0 件のコメント :

コメントを投稿